キセル算はなぜ途中が消える?間がキャンセルされる分数計算の仕組み
1/2 + 1/6 + 1/12 + 1/20 + 1/30 + 1/42 + 1/56 + 1/72 + 1/90 = ?
分母がバラバラで、通分しようにも共通の分母を見つけるだけで大変です。
ところが、この分母にはある共通点が隠れていて、それに気づくと通分なしで答えが出せます。
順番に見ていきます。
分母をよく見てみる
問題の分母を並べてみます。
2、6、12、20、30、42、56、72、90。
バラバラに見えますが、それぞれを分解してみると、こうなっています。
- 2 = 1 × 2
- 6 = 2 × 3
- 12 = 3 × 4
- 20 = 4 × 5
- 30 = 5 × 6
- 42 = 6 × 7
- 56 = 7 × 8
- 72 = 8 × 9
- 90 = 9 × 10
全部、連続する2つの整数のかけ算になっています。
1×2、2×3、3×4……と、隣り合う整数のペアがずらっと並んでいるんですね。
この形に気づくと、1つ1つの分数を「引き算の形」に分けることができます。
1つだけ取り出して分解してみる
まず、最初の 1/2 だけを取り出します。
分母の 2 は 1 × 2 なので、この分数は 1/(1×2) と書けます。
ここで、1 のバーと 1/2 のバーを並べてみます。

1 のバーから 1/2 のバーを引いた残り(オレンジの部分)が、ちょうど 1/(1×2) になっています。
つまり、1/(1×2) = 1 − 1/2 です。
計算でも確かめてみると、1 − 1/2 = 1/2 で、1/(1×2) も 1/2 ですから、たしかに同じ値になっています。
もう1つ試してみる
同じことが、次の 1/6 でもできるか見てみます。
分母の 6 は 2 × 3 なので、1/(2×3) です。
1/2 のバーと 1/3 のバーを並べます。

1/2 から 1/3 を引いた残りが、1/(2×3) になっています。
1/(2×3) = 1/2 − 1/3 ですね。
同じやり方で、9つの分数を全部「引き算の形」に分けることができます。
- 1/(1×2) = 1 − 1/2
- 1/(2×3) = 1/2 − 1/3
- 1/(3×4) = 1/3 − 1/4
- 1/(4×5) = 1/4 − 1/5
- 1/(5×6) = 1/5 − 1/6
- 1/(6×7) = 1/6 − 1/7
- 1/(7×8) = 1/7 − 1/8
- 1/(8×9) = 1/8 − 1/9
- 1/(9×10) = 1/9 − 1/10
全部並べると間が消える
9つの分数を、それぞれ引き算の形に分解して全部並べてみます。
まず、どの部分がもとの問題のどの分数にあたるかを確認します。


式の下に書いてある数が、もとの問題に出てきた分数です。分解した式を足し合わせると、たしかにもとの分数に戻ることがわかります。
確認できたら、下の部分を取り払って、展開した式だけを見てみます。

1 − 1/2 + 1/2 − 1/3 + 1/3 − 1/4 + …… + 1/9 − 1/10
ここで、式の中をよく見てください。
−1/2 と +1/2 が隣り合っています。同じ数を引いて足しているので、打ち消し合ってゼロになります。
同じように、−1/3 と +1/3、−1/4 と +1/4 ……と、間の項が次々に消えていきます。

グレーの箱に入った部分がすべて打ち消し合って消え、残るのは最初の 1 と最後の −1/10 だけです。
1 − 1/10 = 10/10 − 1/10 = 9/10
答えは 9/10 です。
通分も使わず、足し算1つと引き算1つで答えが出ました。
ポイント
- 分母が「連続する2つの整数のかけ算」になっている分数は、引き算の形に分解できます。
- 分解した項を全部並べると、隣り合う同じ値の項が打ち消し合って消えます。
- 残るのは最初の項と最後の項だけです。この方法をキセル算と呼びます。
練習問題
【練習問題】①
1/(1×2) + 1/(2×3) + 1/(3×4) + 1/(4×5) を計算してみましょう。
タップで答えを見る
答え:4/5
それぞれを引き算の形に分解すると、(1 − 1/2)+(1/2 − 1/3)+(1/3 − 1/4)+(1/4 − 1/5)になります。
間の項が打ち消し合って、残るのは 1 と −1/5 だけです。1 − 1/5 = 4/5 になります。
【練習問題】②
1/6 + 1/12 + 1/20 + 1/30 を計算してみましょう。
タップで答えを見る
答え:1/3
分母を分解してみると、6 = 2×3、12 = 3×4、20 = 4×5、30 = 5×6 です。全部「連続する2つの整数のかけ算」になっています。
引き算の形にすると、(1/2 − 1/3)+(1/3 − 1/4)+(1/4 − 1/5)+(1/5 − 1/6)になります。
間が消えて残るのは 1/2 − 1/6 です。通分すると 3/6 − 1/6 = 2/6 = 1/3 になります。
まとめ
分母が「連続する2つの整数のかけ算」になっている分数は、引き算の形に分解できます。
分解した結果を全部並べると、隣り合う同じ値の項が打ち消し合い、最初と最後だけが残ります。
この方法がキセル算です。名前の由来は、昔の煙管(きせる)という道具が、両端だけ金属で真ん中は竹でできていたことから、「両端だけ残る」イメージにたとえたものです。
見た目は分母がバラバラで手ごわそうな問題ですが、「分母が連続する整数のかけ算になっていないか?」と気づけるかどうかがポイントです。分配法則と同じく、計算の形を書き換えるだけで答えへの道が一気に短くなります。